星読み絵描き

もとっちノート


人は変われるという話(Part2)

ずっと、心の中で起きることに興味があるんですよね。

私が絵を描く動機は、そこにしかないと言ってもいいくらい。

「美術品として後世まで残る作品を残したい」とか、「オークションで作品が高額落札されるような画家になりたい」とか、そういう願望は、一度も抱いたことはないんです。

私が興味があるのは、絵とそれを見てくれる人との間で起こる、不思議な「体験」なんですね。

ビビッ!ときてくれた人の中で起こっている、意識の変容なんです。

絵そのものに価値があるわけではなくて、その不思議な「体験」にこそ、特別な価値があるのだと、私は思っています。

絵は心の中で、特別な化学反応を呼び起こす「アルケミスト(錬金術師)」だと、私は思っています。

過去7年間、個展ツアーで全国を周って、いろんな会場で原画作品の前に立ち、涙を流してくださる方の姿を見てきました。

その姿を通して「絵には魔法がある」ということを、私は確信したんですね。

原画の前に立った時に起こる、「不思議な体験」は、とても個人的なものだと思います。

いつのまにか心が裸にされていて、自分自身との深い対話に導かれて、心が開放されていく。そういう静かで、でも劇的な体験だと思います。

ある初老の男性の話

個展を開催していると、時には「招かれざる客」が、入って来ることもあります。

単に世間話をしたいだけの人、誰でもいいから自分の話を聞かせたいだけの人、マウンティングしたいだけの人などが、ふらっとドアを開けて入ってくる事があります。

会場費を払っている方からすれば、迷惑以外の何ものでもない、というのが本音のところですが、時にはこうした人から反面教師的な意味も含めて、学びを得ることもあるんです。

その日は、オープンしてしばらくお客さんが来なくて、私は一人で個展会場の整理整頓をしていました。

すると、一台の自転車がギャラリーの前に止まりました。

一見して絵画に興味があるようには思えないタイプの、初老の男性がガラス窓の中を覗き込むと、彼は自転車から降りて会場に入ってきました。

「いらっしゃいませー」

「入場無料だよね? あなたは芸大出てるの? どういうタイプの作家さん? プロ? アマチュア? どうやって生計を立ててるの?へー絵の値段、強気だねー etc….」

初老の男性は口を開けるなり、息つく暇なくまくし立ててきました。

作品を鑑賞せず、こちらの様子などお構いなしに、私をつかまえて言葉を並べ続けました。

そして案の定、マウンティングが始まりました。

「絵で食べていくなんて不安定じゃないの? 受賞歴とかなくて個展できるの? 私は定年まで会社人間で、安定した暮らしをしてきた。あなたは先の保障のない生活で不安じゃないの? etc…」

私にはサラリーマン時代に習得した秘技「忍法隠れ身の術」があるので、気配を徐々に消して、「ドロン!」と身をクローク(荷物置き場)に隠して、この男性が立ち去るのを待ちました。

心理学的に見れば、彼は私に用があるわけではないことは明白でした。

彼は、自分自身の抑圧してきた欲求、すなわち「もっと自由に生きてみたい」という自分の願望を、勝手に私に投影して、心の中のもう一人の自分を、押さえ込もうとしているだけなんです。

永遠に「シャドウ(抑圧した欲求が作り出す、心の中のもう一人の自分)」と、会話しているだけなんです。

つまり「独り言」なんです。どこまで行っても。

もしかしたら、若かりし日にアートに興味があって、それを諦めるという経験をされていたのかもしれません。

独り言の出口

私はクロークに入って、片付けをしながら、男性の様子を横目でうかがっていました。

彼は私が相手をしてくれないと分かると、一人で会場を周りはじめ、絵の下に設置してある、小さな説明文に気がつきました。

そこには私がツイッターで投稿している様な、短いメッセージが添えてありました。

その文章を読み、絵を見るという事を繰り返しながら、彼は会場を二周回って、じっくり時間をかけて作品を鑑賞して行きました。

「なるほど、自分の子供の頃の心に戻ってみるということか…(ブツブツ)」

そんな声が聞こえた後、クロークに人が近づいてくる気配がして、ふっと目を挙げると、そこに彼の顔がありました。

「またかー…OMG」と正直思ったのですが、彼は私に向かってこう言ったんです。

「あなたのメッセージに共感しました。

私は年金暮らしで今は余裕がなく、絵を購入することはできませんが、とても気に入って持ち帰りたいと思った絵が、この中にいくつもありました。」

彼は自身の価値観に関わる言葉を、会場に入ってきた時と出ていく時で、180度変えて行ったんです。

彼は独り言のトンネルを抜けて、最後に私に言葉を伝えにきたんです。

この時、ようやく彼と私の間に、会話が成り立ったんだと思います。

そしてお礼の言葉を小さく呟くと、彼はさっと自転車に乗って帰って行きました。

もしも最初から、そういう態度で接してくれていたら、もっと素晴らしい時間になったと思うんですけどね。

でも私にとっては絵というものが、人の心を解き放つプロセスを垣間見ることができましたし、おそらく彼にとっては、自分の内面と向き合う得難い機会になったんだろうなー、と思いました。

シャドウと土星

「初老・男性」という属性と、「マウンティング」という行動は、ことさら紐付けされやすいと思います。

でも、私たちは程度と表現方法の差こそあれ、シャドウに触発されている時、この男性が会場に入ってきた時のような姿を、意図せず他人に見せてしまうことがあります。

「私は絶対に、そんな失礼な態度はとりません!」と、否定したくなる気持ちは分かります。

でもこれが厄介なのは、無意識の情動だということなんです。

自分で自分のシャドウに気がつくことは、なかなか至難の技です。

鏡に映すことでしか自分の姿を見ることができない様に、私たちは自分の本当の姿を知るためには、他者という鏡を必要とします。

そういう意味で言えば、「人間関係」というのは、お互いのシャドウの投影の結果とも言えます。

過度にイライラしたり、相手をどうしても否定したくなったり。

過剰に羨望の眼差しで見てしまったり、嫉妬心を募らせたり。

そういう負の感情は、自分の心の中に、抑圧されたもう一人の自分が存在する事を教えてくれます。

それに気がつけたなら、あとはあなた次第です。

このブログは「星読み絵描き」のブログなので、最後に少しだけ占星術の観点から、つけたしさせていただきますね。

シャドウはホロスコープの上では、「土星」の配置と密接に関わっています。

土星と他の惑星との関係を見ることで、それをある程度把握することができるんです。

シャドウは、自分自身が認めたくない感情である場合も多いのですが、ホロスコープ・リーディングの一環として、それを知る分には、だいぶ受け入れやすくなると思います。

もっと大きな視点から、マイナス面だけではない、その特別な意味を理解することができるからです。

ご興味ある方はぜひ「星読み絵描き」に、ご連絡くださいませ!

、、ということで長くなっちゃったけど、今回も最後まで読んでくれてありがとー!

Thanks!



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