目次

1.「森の入り口」

2.「過去からの手紙」

3.「突然の雨」

4.「かみさまとの会話」

5.「雨上がり」

6.「身体と心」

7.「生きる」

8.「あとがき」

 

 

1.「森の入り口」

 

 

目の前に美しい蝶がふわっと舞い降りた。

 

私は蝶を追いかけた。

 

理由はそれだけ。

 

全てを捨ててしまいたくて、ただ夢中になって歩いた。

 

生きることに少し疲れていたのかもしれない、あの時。

 

 

森の中には美しい鳥たちが羽を広げ、さえずっていた。

 

鳥たちの歌声に誘われるようにただ足を進めた。

 

森の中にいると時間の感覚が変わる。

 

どれくらい歩いたのだろう?

 

気がつくと私は、森の奥深くに迷い込んでいた。

 

いつからか白い猫が一匹、私について来ていた。

 

 

 

2.「過去からの手紙」

 

 

森の中に古びて朽ちた家を見つけた。

 

そこは祈りの場所のようにも思えた。

 

人の気配も暮らしの気配もなかったけど、私より先にこの森に誰かが来ていたということを、家は無言で教えてくれていた。

 

 

 

私はまるで、この古びて朽ちた家のようだ、と思った。

 

若い日に失った記憶を取り戻すこと。

 

私の人生の自由になる時間は、ただそのために使ってきた。

 

その願いを叶えられた時、すべてが報われる。

そう信じて過ごしてきた。

 

でも、その願いが叶った後、私の中に残ったのは、ぽっかりと空いた大きな空洞だった。

 

 

テーブルの上に残されていたノートをパラパラとめくりながら、物思いにふけっていた私は、ノートの隅に名前を記すと、古びた家を後にした。

 

 

3.「突然の雨」

突然の雨に樹々が濡れる。

 

灰色の空に覆われた森には、雨の音だけが鳴り続いていた。

 

ずぶ濡れになる自分が、なんだか寒さと悲しさを通り越しておかしく思えて私はそのまま歩いた。

 

流石にもう来た路を引き返そうかと思ったその時、かみさまと出会ってしまった。

 

ばったりと、目と目があってしまった。

 

 

 

かみさまは、私を雨宿りできる岩の窪みに連れていくと、ふかふかの大きなバスタオルでくるんでくれた。

そして、森の幸をご馳走してくれた。

 

 

 

 

4.「かみさまとの会話」

「雨ふらし」とかみさまは、私のことを呼んだ。

 

君を待っていたよ。

 

久しぶりの「大雨ふらし」のおかげで森が喉を潤している。

 

この雨は、やがて川になり、草木を育て、鳥たちを育む。

 

一粒の雨粒から、たくさんの世界が生まれるんだよ。

 

やがてくる旅立ちの日まで、この森でゆっくり休んで行くといい。

 

 

「ルーナと不思議な森の物語」Page2 につづく