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2020/11/15

AIWOKA ISLAND STORY 第7章

第7章「未来からの手紙」

翌朝、僕はルーナに起こされて目覚めた。

 

「おはよう、ソル。」

「あれ、あれから寝ちゃってたんだ、、。虹色の鳥は?」

 

「夜のうちに飛んで行ってしまったわ。次の仕事があるからって。」

 

「そうかー。何か聞けたかい?君の記憶に関わること。」

 

「うん。。ソル、浜まで歩かない?今なら朝陽が見えるかも知れないから。」

 

浜に降りるのは簡単だった。ルーナは虹色の鳥から、昨晩近道を教わったと言って、道案内してくれた。

浜に降りると、朝陽がちょうど水平線から昇り切ったところだった。海に朝の太陽の光が散りばめられて、波が優しく輝いていた。

 

ルーナは朝陽を吸い込むように、両腕を広げて、大きく深呼吸をした。

それを見て、僕も大きく深呼吸をした。

 

ルーナは昨日、虹色の鳥に手渡された手紙を、僕に差し出してきた。

 

「読んでいいのかい?」

そう言うと、ルーナはうなずいた。

 

僕は受け取って、手紙を開いた。

そこにはこう記されていた。

 

 

『親愛なる30年前のルーナへ

(少しおかしな書き出しね、あなたは私なんだから。)

 

30年かけて、記憶を取り戻すために、色々と調べたの、そして私はようやく自分のことがわかったの。

それを伝えるために、この手紙をバードに託した。

 

彼は時空を超えて、手紙を届ける郵便屋だから。過去にも未来にも、手紙を届けられるの。

(彼はこちらの世界では、”バードの時空便”って名前で、郵便屋をやってるわ。)

 

 

あなたが記憶をなくてしまったことには意味があって、それはね、あなたの生い立ちと関係しているの。

 

AIWOKA ISLANDから約1000マイルほど離れた場所に、”レアリテ”という王国があったの。

 

レアリテは要塞のように、壁に囲まれた国。隣国との紛争が絶えなかったから、レアリテの人々は、自分たちが住む街をレンガの壁でぐるっと取り囲んで、生活を守っていた。

 

壁の中は平和が保たれていて安心だったし、映画館やレストランや娯楽もあったから、壁の外にはでられなくても、人々は楽しく暮らしていた。

 

そんな生活の中で、レアリテの人々は、いつしか世界がどれだけ広いのかってことを忘れてしまった。学校でも、外の世界のことは一切教えなかったから。

 

きっと、壁の中の平和を守るために、王様がそうしていたのね。

 

あなたはね、そんなレアリテの王様の2番目の子どもとして、生まれてきたの。

好奇心旺盛なね。

 

あなたは小さな頃から、しばしば王宮を抜け出して、壁の上によじ登って空を眺めていた。

 

ある時、いつものように、壁に登って空を見上げていたら、虹色の羽をした鳥が飛んできたの。

その鳥は、頭上を越えて 街の中に飛んでいったかと思うと、しばらくしてまた壁の外に飛び去っていった。

それを見た時、鳥はレアリテの壁を越えて、自由に行き来できるんだってことに、気づいたの。

 

あなたは壁の外の世界を見てみたい、と強く思った。

 

それから、鳥が飛び去る時に落としていった虹色の羽根を眺めては、外の世界を想像する毎日がはじまったの。

そしてとうとう、ある月の晩に、あなたは壁の外に出ることを決意して、壁を乗り越えた。壁面に生えたツタを足場にして、壁の外の世界に降りていったの。

 

 

でも、それはね、たとえの王様の娘といえども、レアリテでは許されないことだったの。

 

しばらく歩いたところで、あなたは王国の警備に捕まってしまった。

 

そして、裁かれた。

 

壁の外の世界を知ってしまった者は、レアリテでの記憶を取り上げられて、外の世界に追放される決まりだったから、あなたは記憶をうばわれて、海の彼方に追放されたの。

最後に小さなボートを与えてくれたのは、レアリテの人々なりの良心だったのかも知れない。

 

 

それからあなたは、南十字星を頼りに、ボートを漕いだ。どこに着くのかはわからなかったけど、いつも夜空に見上げていた星を目印に進めば、どこかにたどりつけると思ったから。

 

そして、あなたはAIWOKA ISLANDに流れ着いた。

 

ここから先はあなたが知っている通りよ。

 

 

そして今あなたは、未来のあなたからの手紙を受け取っている。ここまで、私が調べたことをあなたに伝えてきたけど、本当に伝えたかったのは、あなたの過去じゃないの。

 

 

 

30年後のあなたが、これを読んでいるあなたに伝えたかったのは、たったひとつのこと。

 

あなたは、自分の人生を自分のやり方で切り開いて、生きて行っていいってこと。

 

 

わたしは30年間、ずっと無くした記憶にとらわれて生きてきてしまったの。本当の名前を知りたかった。

 

でもね、本当の名前を知っても、何も変わらなかった。

 

 

それよりもルーナと名乗ってからの時間の方が大切だと感じたの。

 

あなたは自分で自分に名前をつけていいし、自分の人生を自分のやり方で歩んでいいの。

過去は変えられないかも知れないけど、未来は、今からちゃんとつくっていけるから。

 

 

あなたの未来の幸運を祈るわ。

30年後のルーナより。』

 

僕は手紙を読み終えて、ルーナの方を見た。

 

彼女は、朝焼けの海に向かって小石を投げて遊んでいた。

 

 

 

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